anonymous nocturnal BLOG

クリスマス小説は別にサイトにupする予定ですが、何となく思いついたのでクリスマス準備小話をこちらにup。

ちなみに実録小話。
えー、何それ面白そうｗってノリで買ってみたんですが、トラウマになって今でも食べれません・・・。
好奇心は猫を殺すってこのことですかね。

つづきからどうぞ。

「新一、今年のケーキどうする？」

快斗と一緒にクリスマスを過ごすようになって数年。
人気マジシャンという職業柄、イヴか当日どちらかは大抵仕事が入ってしまっているのだが、どちらかは必ず空けて、二人で過ごすようにしている。
もっとも、新一が大きな事件に関わっていなければ、の条件付きだが。

「ホワイトチョコのブッシュドノエルとか、ナポレオンとかもあるよ。シンプルなフルーツケーキでもいいよねぇ」
「あー。オメーが食いたいのでいいよ」
「それいつもじゃん」

本当は快斗の手作りが一番舌に馴染んでいるのだが、何ぶんショーの準備で忙しい時期だ。クリスマスケーキは店で買うのが常だった。
複数の店で貰って来たらしいチラシをぱらぱら見ながら、快斗がうーんと唸る。

その様子を何とはなしに見ていて、新一はふと思った。

「なあ、オメーでも苦手なケーキとかあんのか？」
「へ？　苦手なケーキ？」

そうだなぁ、と手を顎にかけて考え始めた。自分の癖が移ったのかと思うと、落ち着かなくなった。
快斗はそんな新一の様子には気づかないようで、思い出したように言った。

「ああ、そういえば、前にモンブランのホールケーキを食べたことがあったな」
「モンブランの、ホール？」
「友達の誕生日パーティーの時にさ、ちょっと珍しいと思って買ったらしいんだけど。あれはえぐかったな」
「えぐい？」
「だって想像してみろよ。土台のタルトと外側のマロンクリーム以外は、中身全部生クリームだぜ？　普通サイズならいいけど、それが特大のホールサイズだもんなぁ」
「・・・・・・・・・・・・・・」

想像して思わず沈黙した新一をよそに、快斗は「ホールサイズの場合、タルト生地とマロンクリームに比べて生クリームの比率が尋常じゃ・・・」とかなんとか呟いている。その頭の中では目まぐるしく複雑な計算をしているのだろう。IQの無駄遣いだ。

「あれからしばらく、モンブランは食べれなかったよ。トラウマになった」
「へぇ・・・・・・」

頬を引き攣らせている新一の前で、快斗は相変わらずケーキのチラシを見ている。
写真すらも見たくなくなって、新一はそっと目を逸らした。

「・・・今年は、小さめので・・・・・・」

えー、と不満そうに言う快斗を背に、新一は聞くんじゃなかったと小さくため息を吐いた。